てっきり軽蔑すると思っていたのに、娘は優しく微笑んでくれていた。
「それは
貴方自身が自分と向き合ってないだけ…
貴方にもいるんだよ?」
娘はそんな王子に、優しく言い聞かせるように言う。
「もっと視野を広げて?周りをよく見て…
貴方自身を見てくれてないのなら、
国王は何故貴方の誕生日に街の皆まで
宮殿に集めて祝うの…?」
王子が自分自身で気づいてほしい、だから教える事は出来ない。
「宮殿の皆は、王子という肩書きだけで
あそこまで貴方に尽くすと思うの…?」
しかし僅かな希望まで導く事は出来る。
王子の心が大きく揺れ動く。
「視野を広げて…、周りを見て…
……ほら…。
貴方の周りには今…、誰がいるの…?」
自分自身と向き合っていないだけ…、その通りだった。だから娘の言葉を素直に受け入れる。
(俺は…)
もう一度、王子は目を閉じた。
(ずっと一人だった…
独りだと思っていた…)
宮殿の掟や王子の肩書きのせいで、皆が皆王子の自分を見て、自分自身を見てくれなかった。
