砂漠の月歌 〜dream story〜





「そういうものだよ…。
貴方にはいない?そういう人達」



「俺…?」


今まで考えもしなかった事を聞かれ、王子は戸惑ってしまう。



「駄目だ…」


取り敢えず目を閉じて考えてみるが、誰も思い浮かばなかった。



「……俺にはいない…」



「そんな事ないよ…、貴方にもきっと「俺は貴方とは違うっ…!!」


娘の言葉を遮り、ついには声を荒げて言ってしまった。



「……俺は…
貴方のような優しい両親には、
恵まれなかったっ…」


本当は一番考えたくない事に、思わず目を伏せてしまう。



「……宮殿なんて知るか…
肩書きも興味ない、国などどうでもいい!!
俺は普通で良かったんだ…
普通が良かった…。

……貴方とは、違うんだ…」


今まで言うのを許されなかった言葉が、気づけば勝手に口が動いていた。

しかし、声は震えていた。



「……すまない…」


これはただの八つ当たりだと、分かっていた。

言った後で後悔し、罪悪感が心を蝕む。



「そうじゃない…そうじゃないよ…。」