砂漠の月歌 〜dream story〜





「全くだ。
でもまぁ、それでも感謝はしているが…
宮殿では同じ目線で話せる相手が
他にいなかったからな…。」


気づけばまた、切なそうな表情になっていた。

娘が無言でいると、今度は王子が話を切り出す。



「今度は…、貴方の番だ。
俺も聞かせてくれ、貴方の事を」

まさか聞き返されるとは思っていなかったので、娘は驚いた。



「私…?」


湖に視線を移しながら、少し考えてからゆっくりと話し始める。



「私はねー…普通だったよ。

と言っても小さい頃、両親が死んじゃって、
親戚の人に引き取られて
隣の野の国に引っ越したんだ。

だから私、
もともとはこの国に住んでたんだよ…?」



「そうだったのか…」


両親が亡くなっていた事よりも、もともとがこの砂漠の国の出身だった事に驚いた。



「此処に引っ越してきたのは…、一年前。
そろそろ一人立ちしないとなって思って、
一人暮らしを始めたんだ。

それと…故郷が恋しかったからかな」


何処か遠い目で、娘は湖を眺める。