砂漠の月歌 〜dream story〜





「え…、」



「まぁ、
何れは戻らなければならないんだろうが…
それまでは、一人になりたかったんだ…。

ほら、宮殿では窮屈だろう?」


表情では笑っているが、何処か悲しそうにしていた。



(あぁ…、やっぱり…。
王子は今でも孤独だったんだ…

一人で全部
抱え込んでるの、見てて分かるんだもの…)


それを見て、漸く娘は姐御の言葉を理解する。



(この人は今…一瞬でも良いから
王子っていう肩書きから、離れたいんだ…)


“孤独”というものは自分には分からないが、それでも娘は、少しでも王子の役に立ちたいと思った。



「すまないな…。
宮殿の話などしてもつまらないだろう。
忘れてくれ」


すまなそうに笑う王子に娘は言う。



「どうして?面白いよ、そういう話。
自分の知らない世界を
どんどん知っていくみたいで…」