(あっ…、)
そこで漸く、国王の事や宮殿で姐御が言っていた言葉を思い出す。
はっきり言って笑っている場合ではなかった。
「王子、あの…今街でね…」
そこまで言い掛けた時、王子は一瞬動きが止まったが、続きの言葉は大体予想がついていたのだろう。
「あぁ、貴方も聞いたのか…」
王子は笑い掛けて言うと、娘は少し躊躇いがちになる。
「うん…大体の事は、宮殿で姐御さんに…」
「宮殿へ行ったのか?
それは悪い事をしたな…
多分宮殿にいなかっただろう、俺は」
知らず知らず手を煩わせていた事に申し訳なさそうにする。
「宮殿で聞いてきたのなら、手っ取り早い。
全て話の通りだ…。
国王は殺され、狙われているのは俺らしい」
自棄に平然と話すので、娘は驚くしかなかった。
「じゃあ、すぐに戻らないと…」
分かっているのなら何故こんな所に…と疑問に思ったが、話し込んでいる場合ではない事だけは分かる。
「それは…、出来ない…」
しかし王子は首を横に振る。
