息をゆっくり吐いて暫くすると、娘は側に置いてあった袋を拾って家に帰ろうと来た道を振り返る。
……すると漸く、木陰の前に見覚えのある人物が立っている事に気がついた。
「あっ…、貴方は…」
「あ…」
うっかり隠れるのを忘れ、放心していた王子も我に返った。
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あれから少し経ち、湖の畔に二人は並んで座っている。
最初はお互い終始無言だった。
「ごめんなさい…。あれ、私の癖なんだ…」
「癖…?」
何となく気まずい雰囲気だったのだが、娘が先に口を開いた。
「あ、あはは…。
小さい頃、母様に教えてもらった子守唄…
たまに一人で唄うんだ」
「……そうだったのか…」
不覚にも聞き惚れてしまった事は何となく伏せておく。
聴かれていた事に今だ気まずそうに苦笑する娘は、気になっていた事を尋ねる。
「そう言えば王子は、どうして此処に…?」
「俺、は…ちょっと豆腐屋を、な…。」
「また探してたんだね…」
しかし困ったように苦笑する王子を見て、何かが引っ掛かった。
