魚屋のおばさんもまた、憐れむような口調で呟いた。
(………)
自分の知らない間に大事になっていた事に、娘はその場からつい目を伏せてしまう。
(……あの人は、どうしてるのかな…)
そして今王子は、どうしているのかが少しだけ気になってしまった。
━━━気づけば娘は、宮殿の前まで来てしまっていた。
(知り合ってからまだ間もないとはいえ、
何となく気になって来てみたけど…)
一息置いて正門の前から宮殿を眺め回し、かれこれ二度目の溜め息をつく。
(……まるで兵士さんの壁だよね…。)
宮殿の周りを見渡すと、そこらじゅうに宮殿に仕える兵士達が外壁に並んで立っていたのだ。
まさに兵士が一緒くただ。
(考えても仕方ないよね…)
娘は思い切って近くにいる兵士に声を掛けた。
「あの…」
「何か用か」
声に反応して振り返る兵士は見た目通りおっかない。
「用って程じゃ…
王子は今、宮殿の中ですか…?」
すると兵士は用心深いのか、じろじろと娘を見回した後疑わしげに尋ねた。
「……街の者か?」
「はい…。」