聞いていた執事は直感的に思った。



(王子…)


今、王子を一人にしてはいけない。

“独り”にすれば、本当に何処かへ消えてしまうのではないかと…。



「……王子、俺は…
小さい頃両親に捨てられ、国王に拾われた。

それからは宮殿の雑用とかやってたけどよ、
それでも、結構よくしてもらったんだよ」


王子が聞いているかは分からないが、執事は幼少期の頃の自分を明かす。



「だから俺は、
そりゃ血は繋がってねーけど…本当の
親父みたいに慕ってきた部分もあるんだ…。

王子の今まで
背負ってきた苦しみは分かんねー…
でも…死にてーなんて、言うなよ…。」


背を向けている王子に呟くように言った。



「こんな時は、
ちょっとぐらい頼っても良いんだぜ…?

俺は王子の執事なんだからよ…。」


執事の想いが王子に伝わったのかは分からないが、それが今の執事にとって、精一杯の気遣いだった。



「……俺は人を信じない、だから…
お前にも頼らない。余計な気を回すな…」


王子は振り返らずに冷たく言い放つ。