執事が言い掛けたその時、ギィィッ…とラウンジの扉が開いた。


……そこに立っていたのは、王子だった。



「此処にいたか…誰か俺のシャツ知らないか?
夕べから見当たらなくてな…」


何も知らずにいつも通りな会話をする王子を見て、メイド達はいたたまれなくなる。



「おい…、どうしたんだ?」


顔を背けるメイド達の様子がおかしい事に漸く気づく。



「どうした…?」


重苦しい部屋の空気に、王子もいつもと違うと感じた。



「……王子…、」



「おいっ…姐御!!」


口を開こうとする姐御を執事は止める。



「……何かあったのか」


問い質す王子に執事は押し黙る。

暫くして、姐御は再び口を開いた。



「王子…、落ち着いて聞きな。
……国王が、死んだんだ」


それを聞いた瞬間、王子の動きがぴたりと止まった。

言ってしまった信じがたい事実に、執事は歯を食いしばる。シェフやメイド達も俯いてしまう。



「この国に
帰還する途中、射殺されたんだよ…」


呟くように言うそれは、静かなラウンジでは王子の耳にも届いていた。