気づけば、大広間に流れていたクラシックがいつの間にか止まっていた。
「お、もうそろそろ舞踏会もフィナーレだな!!」
「あ…。いけない、もう帰らないと…」
時計の針は既に、12時を指している。
「家に誰か待たせているのか?」
王子が不思議そうに尋ねると、娘は首を横に振った。
「ううん。私一人暮らしだから…
あんまり遅くなると
帰り道が暗くて分かりづらくなるんだ…。
私の家、森の中にあるから…」
「げっ…!!マジかよ!?
あの街の外れにある森の事かっ?」
まさか娘が一人森の中に住んでいるなんて思いもしなかったのだろう。
「一人で住んでるって…大丈夫なのかい?
あの森は獣が多いって聞いたよ」
心配そうに尋ねる姐御に娘は笑って言った。
「動物はたまに出るけど、
別に襲ってきたりしないよ。
見た目が恐い動物もいるけど、
何もしなければ、悪さはしないんだ」
実際に住んでいる彼女の言う事なので少なくとも嘘ではないのだろう。
