「何だ、そうだったか…おい、下げてくれ」



「畏まりました。」


パチンッ…と指を鳴らしてウエイトレスを呼ぶ仕草は実に堂々としていて、とても自分と同い年とは思えなかった。



「ピアノが、得意なの…?」


先程披露したピアノの腕前もまさにプロ並だった。



「ん?あぁ、見てたのか…まぁ、
それなりに英才教育は受けてるからな。
その中でもピアノは自信があるだけだ」



「へぇ…凄いんだね」



「そんな事はない。
特にさっきのは、演説が嫌だったから
たまたま思い付いただけだしな」


この時娘は改めて、自分よりマイペースな人なんだと確信する。


……そう言えば、先程街の人達の会話がずっと引っ掛かっていた。
だから、娘は聞いてみた。



「王子のお父上は何処におられるの…?」


しかし、それに対して王子の返答はこうだった。



「あー…、何処だろうな…。他の国かな」


それは意外にもあっさりした返答だった。

しかし一瞬、はぐらかされたように思える。



(何だったんだろう…)


何故かは分からないが、ふ…とそんな気がしたのだ。