立ち聞きする気はなかったが、たまたま耳に入った街の人達の会話を聞いてしまった。



(……今の話…)


呆然としていた矢先に、いきなり後ろから声を掛けられた。



「おい…、」


……慌てて振り返るとそこには、先程までピアノを弾いていた王子がいた。



「あっ…!!」



「さっきはすまない、置いてけぼりにして」


偶然ステージの上から娘を見つけたので先程の挨拶をしにきたのだ。



「いえ、こちらこそごめんなさい。
王子だって気づかなくて…」


取り敢えず素直に謝ると、王子は気にするなと微笑む。



「まぁ…
あんな所で居眠りしていた俺が悪いんだ」



「……やっぱり寝てたんですね…」


実は自分よりマイペースなのではないかと一瞬疑ってしまう。

 そこで王子が、思い出したように言った。



「それ…、」



「それ?」


初めは王子が何を気にしているのか分からなかった。



「いや、敬語が…
別に敬語を使わなくても良いぞ。
多分、年は同じくらいだろう。幾つだ?」