再び王子が尋ねてきたので、娘は平然として答えた。



「え?何の用って…
それは今日舞踏会があるから…」



「あぁ、そうか。今日は舞踏会だったな…
舞踏会…ん?舞踏会…?」


その言葉に何か引っ掛かった。



「舞踏会…舞踏会…
何か大事な事を忘れているような…」


……そこで漸く、王子は大事なある事に気づいてしまった。



「………。は!?」


「えっ?」


突然自分の言葉に驚いて声を荒げる王子に、娘も吊られて驚いてしまう。



「しまった今日は舞踏会かっ…」


「あ、あのー…」


話し掛けて良い雰囲気かどうか分からないが遠慮がちに尋ねてみるが、王子は恐ろしくパニクっていた。



「隠れて寝てたらすっかり寝過ごした…
糞!!あぁぁー演説どうしようっ…」


自棄を起こした王子は唐突に娘の手を掴んで走り出したのだ。



「えっ…え!?」


全く状況が掴めない娘は王子に連れられて宮殿へと走り込んだ。



「っ考えても埒が明かない…走るぞっ!!」


娘の返事は聞かず、宮殿内の通路を一気に走り抜ける。


……その間、ずっとその手は力強く握られていた。