まだ意識がはっきりとしないままボゥー…と辺りを眺めていると、漸く外壁の下にいる娘の存在に気がついた。
「………」
向こうも娘を見て一瞬固まってしまったようだ。
「街の者か…?」
暫く間が空いた後、いきなり話し掛けられた娘は一瞬返事をするのが遅れてしまった。
「は…、はい…。」
「そうか…」
自分の中で納得すると、外壁から立ち上がり、一気に自分の目の前から飛び降りた。
「わわっ…」
しかしストンッ…と軽やかに着地する。
「身軽なんだね…」
それ以前に外壁の高さは50mを越えているのだが。
娘の前に降りてきた王子は再び尋ねた。
「大広間の場所が分からないのか?」
そもそも宮殿に入るかどうか迷っていたのだが、他に言葉が思い浮かばなかった。
「あ…、はい…。」
反射的に頷いてしまった。
しかし王子はそれで納得したようだ。
「そうか…この宮殿は無駄に広いからな。
……来い。俺が案内しよう」
遠慮する必要はないなと思い、娘は快く頷く。
「ところで貴方は…、
今日は何の用で此処に来たんだ?」
