……一方、執事は今だラウンジで喚いていた。



「なぁー多めに見てくれよー
俺次王子見逃したらクビになんだよー…」



「その方が国の為だ」



「待て待て待てって!!王子も馬鹿じゃねー、
演説の時までには絶対戻ってくるってっ」


その執事のあまりの必死さにメイド達は心の奥で哀れに思った。



「はぁ…、窓の外を見てみな」


見兼ねた姐御は溜め息つき、窓を指す。



「げっ…!?」


空は既に茜色に染まっている。日が暮れ始めていたのだ。



「何とかして舞踏会の最初の演説までに
王子をステージの上に立たせな。

それまでに街に使用人でも紛れ込ませて
王子を探しておけば良い。

……行くよ、お前達」



「「「「「はい、姐御様っ!!」」」」」


そう言って、姐御はメイド達を引き連れてラウンジを後にした。



「……泣いてもいいですか…」


ラウンジに残された執事は一人涙声で呟いた。




━━━━現在の時刻、午後5:00…。