くどくどと慌てて言い訳を述べる王子に、娘はつい笑ってしまうが、試しに尋ねてみる。



「もし…
思い出さなかったら、どうしてたの…?」



「は?あぁ、それはない」


王子は何故か自信満々にそう答える。

その理由が分からず、不思議そうな顔をする娘に言った。



「だってな…?信じてたんだ。俺が
絶対思い出してくれると、信じてたからだ」


理由はとても、簡単なものだった。



「……そっか…。」


しかしそんな単純な答えでも、納得してしまうのはやはり、自分がどれほど王子に甘いかなのだろう。



「じゃあ…、あの日約束をした後、
私は引っ越した先で辛い事があったショックで…、
王子も自分の事や宮殿の事がいっぱいで、
お互い忘れちゃったんだね…。」



「あぁ…貴方とあの湖の畔で遊んだのは、
あの日一度だけだったからな…」


少し悲しい顔になる娘に、王子は何とか元気づけようとする。



「でもほら…、約束は守ったぞ?
ほら、こうやって…
ちゃんと貴方を見つけ出した…。」



「そうだね…。でも…もう一つ、
私と約束が出来たんじゃなかったかな」