……そんな時、王子は無意識だったのか、こんな言葉を呟いていた。



「でも…、あの日は夕焼けだったな…」


一瞬、娘は自分の耳を疑ってしまう。



「………。え…?今何て…」



「…?いや、
だから…貴方と約束を交わした日は
夕焼けだったな、って…」


娘は再び固まる。そして次の瞬間、恐らく王子の前で初めて叫び声をあげた。



「ぇえええーっ…!?」


「ぇえって…、ぇえっ!?」


王子は二度驚いた。


……驚いた事に、今の話によると王子は幼い頃あの湖で自分と約束をしたのを覚えていた事になる。



「おっ…覚えてたの…?」


王子はコクンッ…と頷く。



「いつから…?」



「あー…
正確には、貴方と湖で会った夜だが…」


しかも自分よりも先に思い出していたらしい。



「い…言ってくれれば良かったのに…」


何だか王子に対してとてつもなく申し訳なく感じてしまう。



「そ!?そんな顔しないでくれっ…
ただ、あの日
貴方を見つけると約束したのは俺ですとか、
何かちょっと言い辛いだろう?だから…
思い出すまで待っていようかなと…」