沈黙が続いて気まずい中、先に王子が口を開いた。



「あー…あの、
今夜はあれだな。月が綺麗だな」



「え?あっ…本当だ…。今夜は満月かぁ…」


青白い満月を見ながら、ふ…と娘は呟いた。



「王子と
湖で会った時も、確か満月だったね…。」


たった数週間前の事が娘にとって。何だか少しだけ懐かしく感じる。



「そう言えば…、覚えてる?
最初に私と王子が出会った時の事」



「ん…?あぁ、
俺が宮殿の外壁で寝ていた時か」


しかし娘はそれを聞いてつい笑ってしまう。



「あのね…、
実は最初に出会ったのは森の中なんだよ。

舞踏会の当日のお昼頃、
森ですれ違ったの気づかなかったでしょ?」



「ほ、本当か!?気づかなかった…」


王子がそう言うと娘は、やっぱり…と笑いながら言った。



「まぁ…、その日も満月だったから、
ひょっとしたら満月に縁があるのかもな」


そう言って満月を見ながら、軽い冗談を言ってみる。