理解出来ていない放心状態のロゼオに、少し間を置いて王子は言う。



「……ロゼオ、俺はな…
今でも国王が死んだ事を悲しくは思わない。

父親らしい事は一つもされた事がないから…
やっぱりどうしても悲しいとは思えない…」


娘や姐御達は、何も言わずに王子の言葉を聞き入れる。



「……だが…、
立派な国王だと思っている。
父上がどんな思いで
この国を守ってきたのか、今なら分かる…」


王子は宮殿を見上げ、呟くように言う。



「憎しみや争いからは、何も生まれない…
きっと父上はそれを知っていた…。」


そして迷いがない真っ直ぐな目で、王子はロゼオにこう言った。



「さっき、
可哀相だとお前は香澄に言ったが…
可哀相なのはお前だ、ロゼオ…。」



「僕が…可哀相だと…?」


ロゼオにそう言ってのける王子の表情は、本当に何処となく悲しそうだった。



「あぁ…何故なら、お前は愛を知らない…。

だから目の前から人がいなくなる痛みも、
一生分からないだろう…
だから、お前は可哀相だ…。」



「黙れよっ…!!僕は、王になるんだ…!!
君を殺して、僕はっ…」