旭んちのトラクターが修理から戻ってきて、広じぃがトラクターを引き取りに来ていた。
そんな様子を残念そうにしていたのは日夏。
「何でぇっ!耕にぃじゃないじゃんか~」
わたしたちの顔を見下ろして広じぃが顔を歪ませる。
「耕毅は出荷に行ったから残念だなー、にち?」
「ちぇっ」
わざわざ言葉にして舌打ちをする。
「みーも寂しそうだな?」
「うーん…。また後で会えるから寂しくないよ!」
そう笑顔を見せると、広じぃの口元が下がる。
「…そうだな。でもな、みー?また後ででも、会えなくなるかも知れない時もあるから。
見たい時に見て、言いたいことは貯めとかないで言うんだぞ?」
広じぃは真顔でわたしの帽子を直してくれた。
「…はーい!」
なんとなく広じぃが何を言いたいことがなんなのかわかって、元気良く返事を返した。
わたしは日夏の方に向き直ってこう言った。
「さっきの約束…。忘れないでよね!」