あの暑い 夏の記憶


葵ねぇの喝で静かになった小屋には、また蝉の声が爽やかな風と共に流れて来た。


わたしたちがお弁当に手をかけた時。


「もうお母さんたち行ってるからね。葵ちゃんとご飯食べたら、ビニールハウスの雑草ね!わかった日夏?」

小屋の引き戸を開け放し、日夏ママがしつこいくらいに日夏に注意しているのがおかしかった。


「ちゃんと言うこと聞くのよー!」



「…わかったよ~っ!ちぇ」

日夏ママたちが、畑に消えて行ったあと。


葵ねぇは、日夏の顔の前に置かれていたケーキを冷蔵庫にしまい込み、鼻歌を歌う。


「ケーキもお預けだし…。何で、オレの弁当はご飯だけなんだよっ!!」

と、息巻いている。


葵ねぇが準くんたちに、大きな2段重のお弁当箱を差し出した。

「たくさん食べてねー。2人が来るって聞いたからいっぱい作ってきたから」


その様子を目をキラキラさせて物欲しそうに見ていた日夏は。

「も~らいっ!」

唐揚げと卵焼きをパパッ自分のお弁当に移した。


「日夏、こぼしてるってば、汚いなぁ」

大口開けてボロボロとご飯粒をこぼす日夏に、わたしは冷たい視線を送り続けた。