あの暑い 夏の記憶


葵ねぇが運転するトラクターの姿が、小さくなるまで見送った。


「ほら、大丈夫だろ?」

耕にぃは、はにかんでわたしと日夏に向き直り、強い力で頭に手を置いた。


「…今日はいつもに増して…怖え~よ!葵ねぇ!何かいつもより変だった!!耕にぃ~っ!…葵ねぇがおかしい!」


「…は?何が?」

耕にぃはびっくりして目を丸くし、わたしを見下ろした。


「…なんかね。…フフッって笑って…。不気味だったよ。何かいいことあったのかな…?」


「ば、バカか!あれがいいことあったように見えっかよ~っ!?何か…、その辺に生えてる、…毒きのこ食ったんじゃね~か?」

わたしの言葉を力いっぱい否定して、恐ろしそうに顔を強張らせて見せた。


「アハハッ!毒きのこかー。日夏ー、面白いこと言うなー?」

さっきまでの表情を崩し笑い出す。


「あ~っ!耕にぃ!さては…、冗談だと思ってんな!?」

今度は、顔を膨らませ唾を撒き散らしながら、耕にぃに肘打ちを食らわした。


日夏じゃないんだから、葵ねぇがその辺のものを食べるとは思えない。わたしは耕にぃとは違う意味で笑っていた。