あの暑い 夏の記憶

「心音にはまだ難しいか?」

そう優しく言うと、口元を緩めた。


わたしはただ首を横に振って見せた。

難しいことはわからない。


でも…すごいドキドキする。



耕にぃはそんなわたしの様子を伺い、またゆっくりと話し出す。



「…俺が大学を無事に卒業できた年…、葵も着いて行く!ここに住みたいって言って…」

遠い目で、記憶の片隅を思い出しているかの様だった。



そんな時、わたしの両親が交通事故に遭い、亡くなった。


わたしを施設に預けないで、自分で育てる。

と、みんなが反対する中、一人豪語していた葵ねぇ。


空気が綺麗で、食べ物も美味しく静かな田舎で育てるんだ。

と、言い切って…。


わたしを連れ、札幌を出た葵ねぇはここにたどり着いた。


それが…、わたしが3歳になった年だった…。


「細い腕で畑仕事なんて無理だ!って父さんも母さんも日夏ママたちも…、みーんな…、よそ者扱いしてたなー…」

ニヤッとわたしの方を向き直った。