あの暑い 夏の記憶


あんなにあった荷物が箱に詰められ、トラックに運ばれた。


日夏の部屋には2日分の着替えに手荷物、2段ベッドと机だけ残され、ガランとしていた。


日夏は、向こうに机とかベッドだのはあるんだってよ。と、言うとベッドに横たわる。


「物がないと広いんだな~、この部屋も。家はこのままで、働きに来た人に貸すんだか…誰にも貸さないんだか…よくわかんね~や…」


「…ほんとに行っちゃうんだね…」


「…海にいない父さんなんか、意味ないって…思ってたんだ…。すげ~悔しかった…でも…。
父さんは、リハビリすれば…片足でも歩けて…片腕でも車は運転できて…。船の操縦も出来る。けど…漁は無理だなって言うんだ…。トラクターくらいは乗れるんだから…あっちで農家やるかって。
母さんには苦労させたなって…言ったんだ…。
オレ…海にいる父さんも好きだけど…トラクター動かす父さんも見てみたいんだ…。
だから…」


言葉を詰まらせながら最後に。

この町から出るって決めたんだ…。

と、淋しげに言った。