あの暑い 夏の記憶


何も用意されていなかったわたしの口からは、言葉が出るわけもなく。

黙って突っ立っているわたしに。


「…丁度良かった。これやるよ」
って、摘んでぶらぶらさせた、それは…。


わたしの手の中に握られた、“それ”と色違いだった。



「…へ?」


「だから~!やめろってその顔~っ!」

と、大笑いし出した日夏は。

何ら普段と変わらなくて拍子抜けした。



あれ…?

こんなこと前にもあったような気がした。


「…わたしも…これ…」

開いた手の上に、日夏の視線を動かして。


「…何だよっ!考えてることは同じかよっ」

って、また笑った。



結び合ったそれは、どちらもヨレヨレで早くもくたびれていた。


日夏の左手首には水色が。

わたしの左手首にはピンク色が編み込まれた、黒い革の鎖が装着された。


気恥ずかしそうに、わたしたちは顔を見合せ笑い合った。