あの暑い 夏の記憶


机の引き出しの中に、しまい込んでいた、革の鎖。

黒と水色の2色に編み上げされ、ひょろっとマジマジみなくても不格好だった。


誕生日に渡すはずだったそれは、ずっと光を知らない暗闇の中で、出番を待ち続け。



無意識にそれを手の平に握り締め、日夏の家まで全力疾走していた。



日夏の家の玄関は、ダンボールが山積みされていて、居間ではダンボールに詰め込む日夏ママがいた。


「…おじゃましまーすっ」

と、だけ言って階段を駆け登る。


その先のドアの向こうが日夏の部屋。



握り締められた拳は汗ばんでいて、ここに来て一気に高まる緊迫感。



…よしっ!

心の中で意を決し、ノックをするのも忘れて、目の前に阻むドアを開け放す。


荷物を整理している手の動きが静かに停止した。


日夏はぽかーんと、突如現れたわたしを見つめていた。