あの暑い 夏の記憶


日夏ママは、昼間は家と病院の往復でほとんどいなかった。


口を閉ざす日夏に、話しかけることをやめないわたしたち。



葵ねぇと耕にぃが呼びかけても、答えることがなかった。


「日夏?」


「はぁー…。どうしたもんかなー」

耕にぃもお手上げだと、言わんばかりに肩を竦めた。



お昼になって、葵ねぇとわたしは日夏の家に勝手に入った。

わたしたちに気づいているはずの顔は、下を向いたままの日夏を捉える。


葵ねぇは何も言わず、日夏の前に立ちはだかり、テーブルの上に置かれたお弁当のふたを開ける。


「…やっぱり」

そう溜め息混じりに呟いた視線の先のお弁当箱。


残さず食べるはずのお弁当の中に。


カレイの唐揚げ。焼きシャケ、イカフライ…。

魚だけが残されていた。


「…何で食べないのさ?いつもは食べるのに、何で?」

と、葵ねぇは日夏の隣に座り込む。


顔を上げることなく。

「…魚…嫌いだから」

ボソッと口を開いた。