あの暑い 夏の記憶


警察の聴取や、海上保安庁。保険会社との事故対応をしながら、病院に付きっきりの日夏ママと旭ママは明日には一旦帰って来る。

衝突させた相手も業務上過失致死傷罪で、現行犯逮捕された。


右腕と左脚以外に、肋骨を骨折した程度で、頭には外傷もなく脳にも異常がないとのこと。

小屋では大人たちがそんな話しをしていた。



でも、わたしの頭には微塵も入って来なかった。


日夏は、家にこもり出て来る気配もなく。



時計の針が止まったかのように、頭の中はストップする。

何も考えられなくて。


その日、何をしたのかも思い出せなくて。



『触んなっ!!…心音なんか…大嫌いだっ!!』

わたしに向かって、初めて口にした、日夏のどすのきいた低い声だけが、ぐるぐると耳の奥を駆け巡る。



『お手伝い一緒に行こう!』

数日前の話しなのに、もう何ヶ月も経っているかのように、記憶が薄れて行く。



相変わらず、ズキンと重たい胸の痛みを、どうすることもできないでいた。