あの暑い 夏の記憶


『触んなっ!!…心音なんか…大嫌いだっ!!』

その台詞ばかりが頭の中で何回も何回も繰り返される。



「心音?…今はそっとしておこう。明日には日夏ママも帰って来るみたいだから」

わたしの後を追って来た葵ねぇの言葉なんて耳に入らないくらいに。


ざわつく心臓。




日夏は、海にいる日夏パパが一番好きだった。


お弁当に魚が入っていると文句は言うけど、残したことはなくて。

本当は日夏パパが持って来る魚が大好きで。



船を操縦して、網を直して。


昆布を干して。


魚をさばいて。



普段の無愛想な日夏パパは、海の上にいる時は別人で。

海のことだけは詳しくて。

笑うと優しい顔をする。



そんな日夏のお父さん。


日夏が好きなお父さん。



わたしは…ちゃんと…。

日夏の気持ち、分かってあげられなかったよね?