あの暑い 夏の記憶


日夏は、誰を見るわけでもなく。

「…右腕と左脚がえぐれてて…傷が深すぎて…治らないって。切断しないと…って…腕と脚…切ったんだ…。
なのに…モーターボートのヤツは…かすり傷で…たいしたことなくて…。父さんより…ボートの心配ばっかしで…。
…船も壊れて…操縦も…漁にも出れなくてっ…!!」

掠れ声でそこまで言うと、頭を上げ睨み据える。


その顔は、泣いているわけでもないのに、今にも涙を流さんばかりの表情で。


「それのっ…!何が良かったんだよっ!?こんなの…こんな物っ…役に立たないんだよっ!!」

拳の中から何かを投げ捨て、怒鳴り声を上げると、靴も履かないで小屋から出て行った。


日夏が立っていた足元には。



日夏が作ったミサンガ。

それが、ボロボロにほつれて赤黒い色に染まっていた。


濃い青に水色と濃い緑。

『海の色だぜ!』


喜んで見せたその顔が、脳裏に浮かび上がる。