あの暑い 夏の記憶


何でも、遊泳禁止の場所でモーターボートで走り回る若者が、日夏パパの船に突っ込んだらしく、その勢いで落ちた。

落ち方が悪く、船とモーターボートの間に挟まれたらしく大量の出血で意識不明だって。


受話器を置いた旭ママが話してくれた。



「…叔父さんどうなんの!?」


「手術中でまだ何とも…。私も病院行かなきゃ」
旭ママは答える。


「…助かるよっ!日夏パパは…助かるよ!!」

日夏パパに限って…。


日夏パパは海で育ったんだから。


…死なないよっ!



旭ママも、日夏ママたちの後を追うように車を走らせた。


わたしと旭は、ただそれを見送るしかできなかった。



誰もいないガランとした日夏の家の窓から、部屋全体が見渡せる。


居間の戸棚の中には、一度も飲まれることがなかった、日夏が選んだお酒が寂しそうに置かれている。


まだ…飲んでないもん。


もったいないって…。



大丈夫だもん!!


ずっとそう心の中で言い聞かせた。