あの暑い 夏の記憶


耕にぃの運転する車に、わたしと日夏に旭の3人と。

葵ねぇも一緒に乗り込んだ。


花火大会に行くには、車でも1時間はかかる田舎道。


本当はどこかに車を乗り捨て、花火のよく見える会場まで歩く予定だったんだけど。

葵ねぇがいるから、会場から離れた電波塔が建つの山を登ったところに車を止め、そこから眺めることにした。



町の景観を見下ろせるその場所には、わたしたち以外の人影もなく、ひっそりとしている。



旭が鉄格子に身を乗り上げ、振り返る。

「おにぃ、まだかなー?」


「まだまだ、7時半からだよ」


「まだ時間あんじゃん」

鉄格子に背中をくっつけて日夏も振り返る。


「ここから見えるの?」

わたしは、真っ直ぐ空の先を差して聞いてみた。


耕にぃは顔をくしゃとして。

「よく見えるよ」

と、微笑んだ。


「耕にぃ…。さては…、毎年見に来てんな!?」


「バレたか?」

と、ニヤっとした耕にぃに日夏は、ずり~っな!と、責め立てた。