あの暑い 夏の記憶


「随分ストレートだなぁ?」


「だってみんな言うんだ。耕にぃと葵ねぇに結婚してもらいたいって!耕にぃは葵ねぇでいいのか!?」


「あははっ。そうかぁ…。日夏にもいずれわかる時が来るよ」

そう、笑って答えた。


「なんだよそれ~!答えになってないじゃん」

少しがっかりした様子で、また不満そうにしている。


わたしも耕にぃの返答にちょっとがっかりした。

もっとそうじゃなくて違う期待をしていたのに…。


この時間、葵ねぇはいつも洗い物や、夕飯の支度でこっちに顔を見せることはあんまりなかった。だから葵ねぇはこの話は聞いてなかったけど、聞いてたらどんなリアクションしてたんだろう。


「千坂さんとこのお嫁さん、赤ちゃん産まれたってね~」


「あ、ほんと?あら~お祝い行かなきゃね!」

耕にぃのママと日夏ママは世間話で盛り上がる。


ここではどこの家がどうしたとか、誰もが知っていてそういう話は日常茶飯事。


とっても広い町なのに、とっても狭い町でもあった。