あの暑い 夏の記憶


おばあちゃんたちが『おやすみ』と、隣の部屋の扉を閉めた。


葵ねぇは、戸棚の下の奥の方から箱のような物を取り出し、わたしの前に置いた。


「心音の生まれた時から3歳までの写真と…後はガラクタ」

それを聞いて、わたしは目を丸くして。


「…見ても…いいの?」

そう聞いてみた。


「いいよ」

葵ねぇはどこか淋しげな顔をした。



ずっと、見たかった。

生まれた時の写真。


ガサガサ…。


箱を開ける手つきが震えていた。


箱の中にはアルバムが2冊と、布の袋に入れられたおもちゃたち。



アルバムの中を開くと、しわだらけの顔の赤ちゃん。

『心音 生後7日』

から始まり。

『心音 生後10日』

『心音 生後14日』


小さなピンクの紙に、写真と共に1枚1枚細かく書かれていた。


時には女の人に抱かれていたり、男の人の膝に乗せられている赤ちゃん。

2人共、どこにでもいそうな茶色の髪で、女の人は肩までのストレートに、男の人は肩につくくらいの長めの髪。