あの暑い 夏の記憶


「心音…笑うなっ!!」


「アハハッ、だって日夏…ご飯のことばっかりなんだもーん」
顔を覗かせると、赤くなって眉にシワを寄せる日夏がいた。


「…たっぷり作ったからみんなで食べましょう」

と、言うおばあちゃんの声と匂いに引き寄せられるかのように中に入る。



狭いテーブルの上に並ばられたお料理たちを、上手い!と、連呼し、こぼしながらお行儀の悪い日夏はやっぱり葵ねぇに怒られる。


おばあちゃんの唐揚げは、葵ねぇのと同じで…優しい味がした。



お腹がいっぱいになった頃、耕にぃは『今日は家に帰るよ』そう言い残し、日夏と帰って行く。


隣の部屋に布団を敷きながら。

「…もう遅いから泊まって行けばいいよ」


葵ねぇは顔を合わそともせずに、おばあちゃんとおじいちゃんに言った。


「そうね…。原西さんの所にもきちんと挨拶に行かないといけないからね」

嬉しそうにおばあちゃんは答える。


それに返事をせずに、葵ねぇは無言で居間のテーブルをどかし、布団を敷いた。