あの暑い 夏の記憶


じんじんと、熱くなる頬っぺた。


痛くて泣いているわけじゃなくて。


「…ごめんなさ…ック」

葵ねぇの背中に腕を伸ばし、しがみつく。



叩かれて痛いはずの頬。

本気で叱ってくれた嬉しさで流れ出す涙。


葵ねぇがわたしを叩いて怒るのは初めてのことだったから。



嬉しかったんだ。



「…見つかって本当に良かったわね。私が余計なこと喋ってしまったから…ごめんね心音ちゃん」

そんなおばあちゃんの声が聞こえて、わたしは葵ねぇの腕の中で力強く首を左右に振った。


「さっ、お腹空いてるでしょう?ご飯、食べましょう。おばあちゃんが作ったご飯じゃ嫌かしらね?」

なんて言いながら、ガチャガチャと食器の音を立てる。


「やった~っ!」

慌てて靴を脱ぎ家の中に上がり込んだ日夏に。


すかさず葵ねぇは大きな声を張り上げる。

「日夏は家に帰ればご飯あるでしょ!?」


「あれは夜食じゃんかよ~っ!」

ムキになる日夏の声がして、葵ねぇの中で肩を震わせる。