あの暑い 夏の記憶


家の前の段差に、思いっきり揺れた2号は荒っぽく止まった。


窓から零れる部屋の明かり。

耕にぃが家に近づいて行く。


「ほら…早くっ!大丈夫だって…」

荷台から降りたものの、なかなか一歩が踏み出せないでいるわたしの背中を日夏は押して来た。


「…もう9時じゃんかっ。腹減った~…ほらっ!」

と、日夏はわたしの手を握って歩き出した。


ガラッ…。

日夏は空いている方の手でドアを開けた。


思わず、握り締められた手に力が入る。


玄関には先に入った耕にぃと、眉を寄せいかにも怒り顔の葵ねぇがいた。


葵ねぇが近寄り、わたしの前に出来た影に。


握られた手の平は汗ばみ、俯き加減で身構える。


右腕を振り上げた葵ねぇの手は。


パンッ…。


と、わたしの頬に熱を与える。


「…葵ねぇ!?」

叩かれたわたしの手を離し、日夏は葵ねぇに詰め寄った時。


「…どれだけ心配したと思ってんの」

そう言って、葵ねぇはわたしの肩を引き寄せて、自分の腕の中に包み込んだ。