あの暑い 夏の記憶

「…葵ねぇは無理かもしんね~けど…花火大会…耕にぃに連れてってもらおうぜ」

ぽつりと喋る日夏に、わたしは。

うん!!と、大きく頷いて見せた。


上を見上げると、どこまでも広がる星空に、少し欠けた月に照らされる。

天然のプラネタリウム。


ビルやお店、車のライトに掻き消されてしまう札幌の街とは違って、散りばめられた光の数々は田舎特有だった。



街のネオンも、ホテルから見た夜景も。

キレイだったけれど。


この町にはないものばかりで。

華やかだったけど。



わたしは、この育った自然たっぷりの町が大好きで。


みんなが大好きで。



葵ねぇも耕にぃも、日夏がいて旭がいて…。


みんながいないなんて考えられなくて。


みんな一緒じゃなきゃ意味がなくて…。



札幌じゃなく、おばあちゃんと一緒とかじゃなくて。

例え、葵ねぇと離れてお父さんと暮らすことになったとしても。



わたしは、この町でみんなと一緒にいたいんだ。