あの暑い 夏の記憶


わたしが生まれて3年、お母さんのお腹には赤ちゃんがいて。
病院に搬送中、たらい回しにあって…結局、どっちも助からなかった。


わたしのお父さんは…、お母さんがいないなら、意味がないって。わたしを育てる気がなかった。

それから、お父さんは姿を消して…。

葵ねぇが『なよっとしたあんな男なんて最初っから信用してなかった!私は一人で育てる』って息巻いて…。


この町に来たんだ…。


葵ねぇはわたしを可愛がっていたから。

いらない子だとか…生まれて来なければ…なんて考えたことはない、って。


耕にぃと結婚しなかったのは…一人で育てるって決めたから、誰かに頼るなんてしたくなかった。


赤ちゃんがいても…結婚を躊躇っているのは…みんなに甘えたくなかったからなんだ。

って、耕にぃが言った。



甘えたくない…葵ねぇらしいなー、って思ったら。

笑ってしまった。



でも、葵ねぇは…。

『心音の人生なのに、私が決めて良かったのかな?』と、随分悩んでいたらしい。