あの暑い 夏の記憶

「…日夏!?いたかっ!?」

そんな耕にぃの叫び声が遠くでした。


すると、日夏が大声で耕にぃを呼び寄せる。

「こっちにいた~っ!耕にぃ~っ!!」


荒々しい足音。

バタタタッ…。


「…心音…。はぁーっ…良かった…」

ホッとしたようなそんな声が近づいて来る。


「…何で!探さなきゃいいのにっ!」

わたしはまた机に俯せになった。


耕にぃは心配そうに声を出した。

「心音?」


「…生まれ、なきゃ…ック…良か、かったック…んだよ」

と、泣きながらしゃくりあげる。


「心音、生まれて来なければ良かった。なんてそんな子供はいないよ。
心音?葵は…心音が生まれてさ、自分の子供の様に喜んでたよ。女の子だってわかって…まだ早いのにベビー服見て回って。ベビー用品準備したりさ…楽しそうに」

耕にぃは優しい口調で話始めた。


「心音のお母さんも17歳で、まだ若かったけれど…。前に話た通り…心音が生まれた時はみんなが嬉しそうにしてたよ。だから…そんなこと言ったら、葵が一番悲しむから言っちゃ駄目だって。な?」

と、わたしの背中を摩りながら優しく言った。


「だ…だって…ックわたしが…ックいなければ…葵ねぇは、ック…耕にぃ…ック…」


「心音…結果はそうかもしれない。だけど…葵は、心音と一緒に暮らすことを選んで…俺が勝手に待ってただけ。心音は悪くない、誰も悪くないんだよ」