あの暑い 夏の記憶


わたしを引き取ったのが、おばあちゃんたちじゃなかったから、葵ねぇだったから。


不思議に感じたんだ。



葵ねぇは、わたしが邪魔なんだ…。


わたしの存在自体がいらないんだよ。




葵ねぇが具合が悪くて大変だから、何でもしたかった。


一人で何でもできるようになりたかった。


ご飯も自分で作って、葵ねぇに無理してもらいたくなかった。



耕にぃと幸せになって欲しかった。


葵ねぇの赤ちゃんが見たかった。


葵ねぇと耕にぃが本当のお母さんとお父さんだったらいいなって…。




違う…。


わたしがいらないんだよ。



生まれて来なければ良かったんだ…。



何で、お母さんはわたしを生んだんだろう…。




…ダダダッ…ガタガタンッ…。

足音と物音が聞こえて…。


「…痛って~っ!!」


暗闇に包まれた教室のドアの前で、丸まった影が見えた。