あの暑い 夏の記憶


わたしは葵ねぇに聞きたくて聞けないでいた。


何で、耕にぃと結婚しなかったのか。

何で、昨日。耕にぃママに頭を下げていたのか。

何で、わたしの赤ちゃんの頃の写真がないのか。

何で、お母さんとお父さんの話をしてくれなかったのか。

何で、葵ねぇがわたしを育てているのか。



聞きたいことは山ほどあったのに。


なぜだか聞けなくて。




葵ねぇ…わかったよ…。


わたし、いらない子だったからだね。



誰にも必要とされてなかったからなんだ。



葵ねぇだって…。


わたしがいなかったら…。


耕にぃと結婚してたよね。



わたしがいなかったら…。


今頃2人で幸せになってたんでしょ?



わたしがいなかったら…。


いなかったら…。



耕にぃだって、待つことないんだよ。




わたしは…。


捨てられた子だったから…。


かわいそうに思っただけなんだ。