あの暑い 夏の記憶


おじいちゃんが、ものすごい剣幕で怒り出した。

「あんな男は駄目だ!墓参りにも来ない、挨拶にさえ来ない。真美がいないなら自分の子供でも何でもないから育てない。認知しない。そう言って見捨てただろ」


わたしのお父さんの話。

わたしの…。



「…生きてるの?お父さん…生きてるの?死んだんじゃ…なかったの!?」

わたしは葵ねぇに問い詰める。


葵ねぇは下を向いて、何も答えてくれなくて、代わりにおばあちゃんが答えた。

「…言ってなかったの…?」



「…嘘つきっ!…わたしはお父さんに捨てられたんでしょ!?だから…仕方なく葵ねぇが育ててくれたんでしょ!?…わたしなんていなければよかった…!!」

気づいたらそう叫んでいた。


おばあちゃんもおじいちゃんも驚いていて。


知ってたはずの耕にぃは何も言わない。


葵ねぇは首を上げることはなかった。


何でこんなに心臓がズキズキするんだろう。



「…みんな嘘つき!!」

最後に叫び声を上げたわたしは、無意識に家を飛び出していた。