あの暑い 夏の記憶


「ゴホッ…あるよ。向こうの農大行ったからな」

そう言うとコーヒーを口に含んだ。


「えぇ~!いいな、いいな!やっぱしすごいの!?」

日夏は目をキラキラさせて耕にぃに詰め寄る。


「大学の周りは田舎だけど、札幌の街は夜も賑やかだよ」


「耕にぃ!さては…、遊び歩いてたな!」

日夏に睨まれても、笑ってる耕にぃ。


「…アハハ!ま、若かったからな」

ポンポンと、日夏の頭を撫でた。


「ずりぃ~!なんできれいなねぇちゃん連れて帰って来なかったんだよ!!耕にぃならモテモテじゃんよ!」


「バカだなー、札幌はレベルが高いんだぞー。田舎臭い男じゃモテません」


「やっぱしそうなんだ…。オレもじゃあ、札幌行ったら田舎のガキ扱いか!?札幌人ってそんな差別すんのか~…」

また意味不明なことを言って、今度は落ち込んだようにうなだれた。


「…!じゃあ…、心音もいくら札幌で生まれたとしても、田舎のガキか!田舎のガキ~」

そうからかいながら、わたしの前で踊り出した。

 
「ふーんだっ!いいんだもん!田舎のガキでいいんだもん!」
 
 
しばらく、日夏は『田舎のガキ~!』ってうるさかった。


自分だって田舎のガキなのにっ!!