あの暑い 夏の記憶


静かになったかと思われた日夏が、とうきびを頬張るわたしに向かって。


「な~?心音も札幌行ってみたくないか?」

とうきびを飲み込む前に突然話を振ってきた。


「…ふぇ?」


「お前…、食ってばっかいんじゃね~よな!」

呆れているような態度がなぜか偉そう。


「札幌で産まれたくせに、なんでお前この町に来たわけ?もったいねぇ~。覚えてないなら行きたいべ?」

そしてかなり興奮気味…。


「うーん…。行ってみたいけど…、遠いよ!それに葵ねぇは…『たいしたことない』って言ってたもん」


「ば、バカじゃね~の!?そんなん生まれ育ってっからじゃんよ~!テレビ見ろよ!」

テレビは、北海道の話題を取り上げている地方局。

札幌のテレビ局前や、札幌駅前の映像が移し出されたりする。


「ここと全然違うって~!ところでさっ!耕にぃは行ったことあんの!?」

身振り手振り激しくなる日夏に、突然話しを振られて耕にぃはむせる。