あの暑い 夏の記憶


「…そっかー。心音は私が帰らなくってもいいんだ」


「……やだ!」


「…よいしょっと。…泣き虫」

葵ねぇは起き上がりベッドに腰をかけ、わたしを腕の中に引き寄せた。


「赤ちゃんに笑われるよー?女の子かなー、男の子かなー」


「…女の子がいいっ」


「何で?」


「…妹、…が、…欲しかったから…」


「…そっか」


わたしの耳の奥に、葵ねぇの優しい声が響き渡る。



「でも…。日夏は男がいいって…」


「んー。それはどうかな。…日夏にいじめられそうだ」


「…ふふっ。あと耕にぃママも…。男の子が生まれますようにってお祈りしてた…」



「え……」

顔を見上げると、顔をしかめて困った様子の葵ねぇがいた。


葵ねぇの向こうから耕にぃも、同じように眉にシワを寄せていた。



七夕だからたくさんお願いしなきゃと、お祝いだと。耕にぃママが張り切っていたことも告げると。



2人はびっくりしたように顔を赤らめ、さっきよりも困っていた。