あの暑い 夏の記憶

町の病院は大きくて、キレイだった。

消毒の匂いが充満して。


病院なんて来たことがないわたしは、ひどくドキドキした。



406病室の名札に葵ねぇの名前を見つけた。


「大丈夫だよ」

耕にぃは強張るわたしの手を握ってくれ。


1番奥のカーテンの向こうに歩いて行く。


耕にぃはわたしを見て、無言でシーッと指を口元に押し付けた。

わたしがそれに頷くと、耕にぃはカーテンを少しだけ開き入って行った。


「着替え持って来た」


「…あっ!ありがと」


そんな声の後、耕にぃは顔だけ出して、“おいで”と口パクした。


「…心音」

葵ねぇはびっくりしたように、カーテンの向こうから現れたわたしを見る。


葵ねぇは、青白い顔をして、心なしか辛そうだった。

真っ白いベッドシーツに包まれて、透明な管から液体が右腕へと運んでいる。



「…来ちゃった…」


わたしは、こんな葵ねぇの姿を見せつけられて、悲しくなった。



こんなの初めてだった。