あの暑い 夏の記憶


“帰りの時間”は、みんなで教室のお掃除。


机を動かす6年生。

隣の教室に手伝いに行く生徒。

窓を拭く女の子。


黒板消しをパタパタしている旭に。

わたしはチョークを片付ける。


日夏は…。
4年生の男の子と真面目にモップかけ。

とは…いかなくて。



「スーパーヒーローはそんなことしないんだぜい!ほんと~のヒーローはこうだ~!」

モップを振り上げ遊んでいた。


「にっちー!!もう葵ねぇ待ってるよ!早くやってよ!」


「あんなばばあ、待たせとけばいいんだよ~っ!」

そう叫び、遊びをやめない日夏に旭はさらに腹を立てたみたい。


「…朝のこと…絶対言ってやるっ!」

バフバフッと黒板消しを叩いていた、手の力が強くなり白い粉煙りが空を舞う。


「あ、ちょっとー、旭っ!粉が口に入るってばーっ!」

表情を歪ませるわたし。


それでも旭はやめようとしないで、怖い顔をして日夏を睨み続ける。


「もう…、ほんとやんなっちゃう」

その横でわたしは、誰にも聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた。