あの暑い 夏の記憶


札幌の街が過ぎた辺り。


「葵ねぇはお母さんとか、自分の家に帰らないの?」

良く里帰りとか言うでしょ?
と、付け足して聞いた。


「んー?帰って来るなーって、怒られたの!アハハッ」


「オレもよく母さんに言われるぜい!」


「じゃー、日夏と一緒だ!」


そんな笑う2人を遮って。

「…わたしのお母さんとお父さんはどこに眠ってるの?わたし…一度もお墓参りしたことない」


流れていく遠くの景色を見つめる。


「…行きたいの?」


「…うん」

コクリと、首を一回下げたわたしを見て。



こっから近いから。と、葵ねぇはスーパーに立ち寄り、お花と線香とタオル、なぜかバナナを買った。



“代々之墓“

と書かれた墓石の前。


タオルでお墓を、磨くように汚れを拭う。


お花とお線香とバナナを供える。


『真心(マミ)はバナナが好きだったの』

その時、お母さんの名前を初めて聞いた。


今まで、ひたすら教えてくれなかったのに。


真美…、お母さん。