あの暑い 夏の記憶


日夏が旭んちに入り浸るように。

毎日、うちには耕にぃが夕飯目当てにやってくる。



「…心音ー!夕日きれーだぞー」

声がする方を見渡すと。


「あー!ほんとだー!」


山と山の間に、弧を描いた夕日が落ちて行く。

みるみるうちにオレンジ色に染まっていく空を見上げ、息を飲んだ。


「キレー!!ねぇ耕にぃ?葵ねぇとどっちがキレイ?」



「…葵。…なーんてな?」

と、消えて行く赤い光を見つめたまま、フワッと笑う。


「…今の、内緒な?」


「うんっ!」

照れ臭そうに人差し指を口元につけた耕にぃに、わたしも同じポーズをして見せた。



耕にぃが、出荷に行った帰りに花火を買って来てくれた。


「早く暗くなれっー!」

わたしと耕にぃは、暗くなったら花火をする約束をしていた。



「2人共ご飯出来たよー!」

葵ねぇは、窓の奥から元気に呼ぶ。


「はぁーいっ!」

わたしと耕にぃは声を揃えて返事をした。


窓の向こうにいる葵ねぇはニコニコしている。


わたしは、この何でもない幸せな時間が大好きだった。